1. あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の
 ながながし夜を ひとりかも寝む
2. あらざらむ この世のほかの 思ひ出に
 いまひとたびの あふこともがな
3. あらし吹く 三室の山の もみぢばは
 竜田の川の 錦なりけり
4. いにしへの 奈良の都の 八重桜
 けふ九重に にほひぬるかな
5. いまはただ 思ひ絶えなむ とばかりを
 人づてならで 言ふよしもがな
6. うらみわび ほさぬ袖だに あるものを
 恋にくちなむ 名こそをしけれ
7. おほけなく うき世の民に おほふかな
 わがたつ杣に 墨染の袖
8. かくとだに えやはいぶきの さしも草
 さしもしらじな もゆる思ひを
9. きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに
 衣かたしき ひとりかも寝む
10. こぬ人を まつほの浦の 夕なぎに
 焼くやもしほの 身もこがれつつ