第一部 第六章 十悪

十悪とは、してはいけないこと十項目です。簡単な説明と、行為、言語、心の区別も入れてあります。

(1)殺生殺人、むやみに生き物を殺すこと悪行
(2)偸盗泥棒、盗み、ズル悪行
(3)邪淫妻や夫そして家族を苦しめる性行為悪行
(4)嘘をつくこと、悪事の隠蔽悪語
(5)二枚舌二人それぞれに反対のことをいうこと悪語
(6)悪口汚い言葉、人の悪口、陰口悪語
(7)無駄口必要の無い余計な話、心にもないお世辞悪語
(8)貪る飽きることなく欲しがる強欲や嫉妬悪心
(9)怒る怒り、怖れ、怨み、憎しみ、苛め悪心
(10)邪見真実を認めず愚かな間違い・迷信を信じること悪心

私の解釈

八正道は、するべきことでしましたが、十悪ではその反対にしてはいけないこと、禁止事項となります。

「殺生」とは、「殺人、むやみに生き物を殺すこと」です。死んだ人を生き返らせることはできません。人が人を殺すことは償うことのできない罪であり、堅く禁止されています。私たち人間は、動物や植物を食べなければ生きていけません。ですから、食事の前に犠牲になった動物や植物に感謝を捧げることが大切です。その他の場面でも動物や植物を殺すことがあります。このとき「一人でも多くの人が幸福になる」かどうかで判断し、無益な殺生は止めなければなりません。

「偸盗」は、「泥棒、盗み、ズル」のことです。人のものを盗んでははいけないということです。ズルいことをしてはいけないということです。泥棒の罪を犯すと、逃げたり隠れたり嘘をついたりしなければならなくなり、苦しみが増すだけです。盗む代わりにあなたの持てるものを他人に施してください。物や金品が無いときは、無財七施をしてください。施しをすることで、あなたにも幸運が巡って来ます。

「邪淫」とは、「妻や夫そして家族を苦しめる性行為」です。邪淫の罪を犯すとあなただけでなく妻や夫そして子供と家族が一生苦しみから逃れられなくなります。ぜひともこの罪を避けてください。

「嘘」は、「嘘をつくこと」そのものです。事実と異なる嘘をついてはいけません。悪事の隠蔽も嘘の一種ですからいけません。嘘をつくとその重みに耐えていかなければならず、苦しみが待ち受けています。一つの嘘が次の嘘を招き、さらに苦しみが増します。相手に嘘がばれたとき相手を傷つけ相手の信用を失います。優しい言葉で正直に話をしてください。(一般には、「嘘」のところに同じ意味の「妄語」を入れる場合がありますが意味を取りやすいようこうしています。)

「二枚舌」とは、「二人それぞれに反対のことをいうこと」です。人を仲たがいさせる言い方も二枚舌です。二枚舌を使いその場を取り繕ったつもりでも、その後、あなた自身は嘘と同じように苦しむことになります。そしていずれは、話をした友人二人の信頼を失い、友人二人ともを苦しめることになります。(一般には、「二枚舌」のところに同じ意味の「両舌」を入れますが、意味を取りやすいようこうしています。)

「悪口」は、「汚い言葉、人の悪口、陰口」のことです。汚い言葉、、人の悪口、陰口を使うと聞かされる相手は気分を害してしまい、あなたの評判は落ちてしまいます。あなた自身が苦しむだけでなく、また悪口を言われた人もまた傷つき苦しみます。

「無駄口」は、「必要の無い余計な話」のことです。相手との会話において、ちょうど今話す必要がないことや、心にもないお世辞、無駄に飾り立てた言葉を話さないということです。もしあなたが無駄口を叩くと聞かされる相手は気分を害してしまい、あなたの評判は落ちてしまいます。(一般には、「無駄口」のところに「綺語」を入れますが、意味を取りやすいようこうしています。)

「貪る」は、際限なく飽きることなく満足せずに金品・権力・地位・名誉・快楽を欲しがる貪欲、強欲、執着心のことです。他人の物・成功・若さへの嫉妬は、貪りに怒りを降りかけたものです。八正道の正定の落ち着いた穏やかな心持ちとは反対の、何かに急き立てられた状態です。強欲からなかなか抜け出せない理由は、強欲が八正道の正念ととても似ており、苦しみを快楽と誤解して、本人が気付かないからです。強欲者は多数の人々に大きな苦痛を与えてしまうため、軽蔑されたり、時には嫉妬を招きます。貪りを捨てるには、八正道の正見の力で、自分の取り分、会社や組織の取り分として本当に必要な量を見出し、自分の姿と比較することです。すると八正道の正定、心を落ち着かせて穏やかな心持ちが蘇ります。譲り合いにより、一人でも多くの人が幸福になることを考えるということです。(一般には、「貪る」のところに「貪欲」を入れますが、意味を取りやすいようこうしています。)

「貪る」の一種に我慢のし過ぎ、頑張り過ぎがあります。「仏の顔も三度まで」という諺があるように我慢にも限度があります。我慢のし過ぎは、「貪る」になってしまうので、心が苦しくなり、嘘や悪口に結びついてしまいます。我慢の気持ちではなく、楽しく待つという気持ちに切り替えられるよう、見方を変えて、良い点を探すことです。頑張り過ぎて体を壊したり、心を病んでしまっては、せっかくの努力も意味がなくなります。こうなっては、頑張り過ぎも「強欲」となるのです。自分の気持ちだけでなく生きている生身の自分の肉体にも相談をして頑張り過ぎかどうか判断してみましょう。

「怒る」とは、「怒り、怖れ、怨み、憎しみ、苛め」です。怖れ、怨み、憎しみ、苛めいずれも怒りの変化したものです。正思惟の喜び・楽しみ・感謝、同情・慰めの反対の感情です。怒りはあなたのものや安全を奪われそうなときに感じやすくなります。空腹が怒りを呼び寄せることもあります。怒りに溺れると苦しいのですが抜け出せなくなります。怒りが怒りを招きます。たとえば、怒りの矛先を収めると、相手に怒っていると分かられてしまう、と怖れをいだき怒り続けるのです。怒る者は、敵を招き互いに傷つけ合い苦しみの連鎖が続きます。怒りを止めるには、八正道の正見の力で、対象について再考し、一人でも多くの人が幸福になる方法を丁寧に見出してください。怒りそうになったら、言葉にも表情にも出さず冷静に考え直すことです。正命の視点から人に親切にし、よい寄付ができるよう考えると良いでしょう。すると正思惟の喜び・楽しみ・感謝、同情・慰めが蘇ります。食欲などの生理的欲求は定期的にやってきますから準備と蓄えが大切になります。(一般には、「怒る」のところに同じ意味の「瞋恚」を入れますが、意味を取りやすいようこうしています。)

「邪見」とは、「真実を認めず愚かな間違い・迷信を信じること」です。物事の原因と結果を正しく見出せないということです。八正道の正見が不足している状態です。あなたが邪見に犯されると、まず周囲の人が苦しみます。あなたが邪見を見破る最後のときに、邪見はあなたに恥ずかしさつまり恐れの一種を感じさせて苦しめようとします。間違いを間違いと認める正直さが邪見に勝つ秘訣です。間違いを間違いと認めることは善い事であり、人々から好まれ尊敬されることです。邪見を素早く見破る方法は、一人でも多くの人が幸福になることを判断基準として、偏りなく幅広い意見を聞き謙虚に学ぶことです。人間は、自分は何でも知っていると傲慢になってしまうとすぐ間違えてしまいます。自分には解らないことがまだまだたくさんあると謙虚に成ることです。「貪る」と「怒る」を退治する方法から解るように、邪見を捨て正見を強化することが最初に必要です。(「邪見」のところに同じ意味の「愚痴」を使うこともあります。)

十悪の順番には意味があります。悪行では、殺生の罪が一番重いです。悪語は、嘘の罪が一番重いです。悪心は、貪るの罪が一番重いです。貪るや怒るが起きてしまうと理解していたはずの正見を無視してしまうからです。もちろん、たとえ軽い罪でも犯してはいけません。

悪心の貪る・怒る・邪見が悪語、悪行を生み出して体の外に出します。悪心こそが十悪の根源です。

もし十悪の罪、特に他人への直接の被害が及ぶ、悪行と悪語、殺生から無駄口までを犯したときは、どうすればよいでしょうか。直ちにしなければいけないことは、悪を犯したことを正直に認め、優しい言葉で、事実と心持を正直に、迷惑をかけた人々に謝罪し説明しましょう。その後は、償いをします。償いは、八正道の方法で行います。こんな風になります。悪事の原因と結果を正しく見て、次から失敗しないよう反省します。人々の幸福のためになるように償いの方法を考え、償いができることに感謝して、心を落ち着かせて穏やかな心持ちで、償いに気持ちを集中して、人に親切にし、できれば寄付もして、優しい言葉で正直に根気よく償うのです。

他人から十悪の害、特に、殺生、偸盗、邪淫の悪行を被らないようよくよく気をつけて、危険な所、危険な相手には近づかないでください。嘘や二枚舌の害に合わないよう、友達を選びたいものです。嘘や二枚舌を使われるかどうかは相手の立場や状況で変わります。立場や状況をよくよく考えておきましょう。

もし他人から十悪の害を被ったらどうすれば良いでしょうか。最初に相手につられてこちらも罪を犯さないよう心を落ち着かせて穏やかな心持ちでいてください。当然ですが、刑法など法律に違反している悪事は、警察に連絡することが必要です。悪事の内容・程度でこちらの対応も以下の例を参考に変化させてください。

頻繁に受ける十悪の害は、第三者に対する悪口を聞かされることです。誰でも仕事などが上手くいかず悲しみに暮れている時は第三者に対する悪口が出て来やすいものです。大切な人が悲しい時に同情心からお話を聞いてあげていると、第三者の悪口を聞かされることがあります。しかし、悪口に賛同したり、慰める側が第三者に対して怒り出すことがあってはいけません。悲しみをじっくりと聞いてあげて同情を示すことが大切で、本心からの優しい慰めの言葉が必要です。悲しみの原因への対策や改善策などは、相手から強く求められない限り、軽々しく言い出してはいけません。悪口を聞かされても相手に同調しないで聞き流すぐらいにしないといけません。

同様に頻繁に受ける十悪の害は、無駄口を聞かされることです。特に自分に興味のない話をされると無駄口に聞こえます、このような時も怒り出してはいけません、相手からすればあなたを頼って相談に来ているのかも知れません。話の内容によって、聞き流すとか、他の用事があると言って立ち去るか、相談にのるか決めましょう。

十悪の被害の後、罪を犯した相手の事情をよく考えて、罪を犯さずに済むよい方法をこちらから提案できたかどうかを調べておいてください。相手との再会は感謝しましょう、相手は悪事のことを気にしていますから、失敗をいたずらに追及してはいけません。謝罪が始まるまでじっと待ちましょう、もし謝罪がなければ、相手の悪事にいつまでも拘ることは好ましくありませんから、追求せず二人の関係を疎遠にしましょう。謝罪が終わってまだ疑問があれば、どうすればお互いに悪事を回避できたのか優しい言葉で正直に質問してみましょう。最後は互いに和解することで八正道に適うと思います。

十悪をご家庭や学校で違和感なく使えるように書き直してみました。

不幸を避ける十の知恵

(1)人を殺さない、食べ物を無駄にしない
(2)人の物を盗まない、ズルをしない
(3)不倫しない、二股かけない
(4)嘘をつかない、悪事を隠さない
(5)二枚舌を使わない
(6)悪口を言わない、陰口しない
(7)喋り過ぎない
(8)欲張り過ぎない、我慢し過ぎない
(9)怒らない、憎まない、妬まない、怖がらない
(10)間違いと迷信を信じない、傲慢にならない
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(更新日: 2017年03月23日)
幸せ研究室