人は、だれでも、家庭や学校・会社・地域社会の集団に属して生活しています。人が、たった一人でどの集団ともかかわらず生活していくことはできません。人が生活していると、必ず他人とかかわり合いがあります。
人類の歴史が示す真実は、一人で自給自足の生活をするより、集団を作り、役割分担して、助け合いをすることで、全体として強くなり、豊かで余裕ある生活ができるということです。
集団の幸せとは、構成員一人一人の幸せから成り立ちます。構成員全員が不幸で、集団が幸せということはありえません。リーダーだけが幸福で、他の社員は全員不幸という会社はすぐ行き詰ります。集団の幸せ度は、構成員のできるだけ多くが幸せであることが条件となります。
集団の幸福度を、絶対的に計測する方法はありません。世の中にはいろいろな集団があります。集団ごとに幸福を追求するための規則は異なります。例えば、日本国の政治では、一人一票の多数決(=民主主義)で国民の幸福を最大化しようとしています。お金で利益(=幸福)を追求する株式会社では、出資金の多寡(=株式の保有率)で議決権(=投票権=経営権)の量が決まります。出資金の多い物が事業方針を決め、利益(=幸福)を出資金の比率で配当します。
たとえ、犯罪者の集団でさえも、集団の掟を守り、自分の集団全体の利益(=幸福度)が高まるように協力し合います。つまり、どんな悪人でも協力しあうという善人の一面があります。
家庭や学校・会社という人間の集団が、より幸せになるためには、構成員が互いに協力することが必要です。協力とは、意思疎通と作業で成り立ちます。作業の中身は、集団により異なりますから、この章では、意思疎通に焦点を絞り、その具体的方法を、人の活かし方、人からの活かされ方という視点で書いてみたいと思います。
人間は、第一に、自分自身の幸福のために活動しますが、それだけで、十分な幸福感に満たされるわけではありません。人間は、第二に、自分が所属している集団、つまり、家族、親族、会社、地域社会、国家、世界の幸福ために活動しないと、幸福感を満たすことができない存在です。自分自身の幸福と集団の幸福の両方を自分好みの配分で実現することが必要です。
構成員が協力していない集団では、必ず、孤立した仲間がいます。孤立した者は、何をしているかわかりません。そして、孤立した者は、集団が不幸になるような勝手なことをしている場合がほとんどです。集団の幸福を高めるためには、仲間を孤立させないことが重要です。
人の活かし方
(1)調子どうと聞く
人に出会ったら必ず挨拶をしましょう。挨拶から人付き合いは始まります。そして、気持ち良い挨拶をしましょう。顔は、にっこりと笑顔で、背の高い人は背の低い話し相手と目の高さを合わせて、軽く目を合わせて、相手を優しく見て、穏やかな心で、挨拶しましょう。
丁寧な挨拶なら、三言まで交わします。最初の一言目の挨拶の言葉には、「こんにちは」、「おはようございます」や「こんばんわ」があります。これは、そのまま「こんにちは」、「おはようございます」や「こんばんわ」をお返しします。表情、声調、態度から、威圧感や恐怖感を無くしましょう。相手をじろじろと上から下まで見すぎないことです。二言目には、「ご機嫌いかが」、「調子はどうですか」となり、「元気です」、「まずまずですよ」、「楽しいですよ」となります。大阪なら「儲かりまっか」、「ぼちぼちでんな」もあります。三言目には、「今日はいい天気ですね」、「今日は雨ですね」、「暑い日ですね」、「寒い日ですね」となり、「気持ちがいいですね」、「雨も時々必要ですよね」、「暑くで敵いません」、「寒くて着込んでます」とかでお返しします。
手短に挨拶するなら、「こんにちは、最近、調子どう。」と聞きましょう。もっと短く「ハイ」、「ヨウ」、「ヤァ」にもなります。黙って微笑み会釈するだけかもしれません。手を振るだけかもしれません。一日に何度も会う人でも、短くてよいですから会う度に毎回挨拶をしてください。お店の店員さんには、「こんにちは」を言うことがお勧めです。ご近所、道端、公共の場、お店や会社では、挨拶をしなければなりません。ちょうどよい挨拶ができる人は、誰からも好かれます。
返事から、相手の様子、特に気持ちを推測しましょう。返事を返す側にすれば、親しみを感じる相手に正直になれるものです。相手に親しみを感じてもらうには、こちら側から先に、相手の良い点を見つけて好きになることから始めましょう。
挨拶の声掛けをしても、返事をしてくれない人がいます。たまたま、聞こえなかったのか、こちらを見ていなかったかと思いましょう。返事をしてくれないなら、一言目で終わりましょう。がっかりもせず、怒りもせず、平常心を保ちましょう。そして、次に会った時も、自分から、声掛けをしましょう。そうすることが、あなたを優位な立場、優しい人格者に位置付けてくれます。
ときどき、何度挨拶をしても返事をしてくれない人がいます。何を聞き出そうとしても、全く話しをしてくれない相手がいます。親しいはずの家族の間でも話しができないときがあります。親子の断絶といって、父親と娘、父親と息子、母親と息子の間などで時々あります。夫婦の間で、話しが成り立たないこともあります。会社のような利益や規律を求める組織なら、話ができない人は、配置転換あるいは解雇せざるを得ません。しかし、家族のような血縁関係は切っても切れません。最初から話をしなかった訳ではなく、次第次第に話をしなくなったのです。互いの話したい内容と聞きたい内容がずれていたことや、忙しくで余裕がなく話し合いの時間を確保できなかったことがほんの数回つもり重なるだけで、たいていの人は挨拶や話をできなくなります。ずれたまま話を無理やり続けると、言った言わないの、喧嘩になることもあります。最悪の場合、相手の悪口を言って罵り合い、相手が怖くなり、嫌いになり、信じられなくなり、さらには自分で自分が怖くなり、まったく話しかけることができなくなります。
話をできなくなってしまった相手であってもなんとか話をしなければならない状況はあります。どうすればいいのでしょうか。私には二つぐらいしか思いつきません。大きな声で泣き叫ぶ、あるいは手紙にして渡すです。でも、大きな声で泣き叫ぶことは、場所を選ぶし、相手を威圧しますから、大人にはあまり薦めません。どちらでも、内容には、自分の正直な気持ちだけを込めます。今あなたと話をしたいこと、話ができなくて苦しんでいること、あなたの気持ちがわかっていなかったことに気がついたこと、あなたの気持ちに共感できなかったことを悔やんでいることを、隠さず説明することです。その他の言い訳、自分の都合などは、含めてはいけません。
(2)場を設ける
家庭なら、家族が、集まれる居間を用意します。一人一人が、くつろげる場所を用意しましょう。家族の間では、食事の後などに、小一時間ほど、いろいろな話題を話してみましょう。親だけが話してもいけないし、子供だけが話してもいけません。何がなんでも、意見を取りまとめて、結論を出す必要もありません。でも、時々は、結論を出してもいいでょう。それぞれの気持ちや考え方を説明して、互いに違いがあることを認め合うことが大切です。
家庭では、誰か一人が、リーダーシップを取る必要があります。そして、リーダーが求めるその家庭の幸福な理想の姿を説明し、家族に理解させる必要があります。夫婦は対等の関係ですから、実現可能な幸福な理想の姿については、夫婦でよく話し合って決めておく必要があります。決めてさえおけば、父親からも母親からも子供に自信をもって説明できます。
人と人が気持ちを通わせるには、時間がかかることを、知ってください。頭の回転の速い人には、この時間は待ち時間に過ぎませんが、その時間を楽しく過ごすか、イライラしながら過ごすかで人間の大きさが量られるのです。
会社なら、朝礼、終礼、定期報告会議を開催しましょう。会社でこそ、「時は金なり」です。利益を得るために、人が集まる会議時間は、短くし中身を濃くしないといけません。チーム・スポーツでは、チームメイトとの連携プレーが大切です。連携の意思疎通がグズグズダラダラしていては、勝利できないため、連携を猛練習します。会社は利益を得るためのスポーツですから、連携プレーが上手で普段の会議時間が短い方が、儲かる強い会社なのです。
会社では連絡用に報告書が用いられています。報告書は、結論、感想、詳細欄に分けて書きましょう。でも、文書の提出だけでは、報告者は孤独感に陥ります。部門で全員参加の定期報告会議では、個人の報告は、結論を先に、感想(=気持ち)を一言添えるようにして、時間を節約し、詳細は言いません。上司は、部下の詳細報告を、別の機会に個別に聞きましょう。
会社は、生産や販売といった利益追求の活動だけをする場で、睡眠、休息、余暇がまずありません。家庭には、睡眠、休息、余暇、育児、教育、など会社にはないものがあり、家庭こそが生きていくためのすべてが詰まっている場所です。一人暮らしで親と離れて暮らしていれば、家庭は主となる一人暮らしと親の家の二つあります。天涯孤独の一人暮らしでも、睡眠、休息、余暇、修行の家庭生活はあるわけです。
(3)気持ちに共感
相手の話からそこに含まれる気持ちに共感することが大切です。人間の心は感情(=気持ち)と理性でできています。感情が伝わることを共感といいます。理屈が伝わることを理解といいます。頭脳と精神の構造からも共感が先に発生しないと、理解の段階へ進みません。「大変だなー」、「そりゃ困るね」、「悲しいね」、「寂しいね」、「苦労したね」、「頑張ったね」、「嬉しそうだね」、「張り切ってるね」、「面白そうだね」、「興味あるよ」、「もっと聞きたいな」という言葉を返し、「ワカル」、「そうそう」と同情していることも言ってあげましょう。こういう相槌を打つことが、共に喜び共に悲しむということです。相手の気持ちを言葉・表情・身振り・手振りにして返してあげ、「自分もそう思う」と話すことで、相手と連帯し始めます。
共通の体験をもった人同士は、近親感が湧いて話がはずみます。自分がよく似た体験をしたことがあれば、「自分も昔そういうことが有った、そうだった、そうだった」と話しましょう。自分が経験豊富な年上のとき、若い相手の経験は小さく見えますが、そういうときこそ、自分の経験をあまり詳しく話さないようにします。なぜなら、年長者の話は、自慢話しであり、それも長い話になってしまい、相手が辟易とするからです。目上の人ほど、聞き上手を目指しましょう。もし、自分に似た経験がないなら、相手の状況を空想してみましょう、そして、「こういうことかな」と質問を切り出して、聞いた話から空想した内容を、再現ドラマ風によりリアルに話してみましょう。
(4)活躍を見たいと期待
今、相手が失敗しているなら、「次回はもっと工夫する様子を見たい」と言いましょう。また、相手が成功しているなら、「次回も成功へ向けて努力を続けていく様子が見たい」と言いましょう。でも、「次回も必ず成功して欲しい」と強制するようなことは言わないようにしましょう。強制は多少なりとも反抗心を目覚めさせて連帯感を削いでしまいます。つまり厳しい強制ではなく楽しい期待です。
(5)善意を確認
相手の行為が、善意から出てくるものであり、社会的に肯定されているものであることを確認するようにします。「やっぱり世のため人のためダヨネ」と一言添えることで、人は、やる気が出てくるものです。始まりは、利己的な行為であっても、家族が喜んだり、会社の利益になることは、結局誰かの役にたっていることを再確認するという意味です。高い志があればある程、より多くの人々の役に立つことができるようになります。
(6)自主性を促進
「あなたは何ができるのかな、何をしてもらえるのかな」と相手に問いかけるようにしましょう。「こうしなさい」とか「言われたことだけをすれはいいのだ」という言い方は好ましくありません。何をしてもらえるかについて、自主的に考えてもらうことが、自主性を促進し、良い成果につながります。
(7)実現可能な目標を設定
相手から、こういうことをすると提案がされれば、その到達水準について、目標値を聞いてみましょう。会社であれば、品質、納期、価格です。子供の勉強であれば、テストの点数に相当します。家族の稼ぎ手であれば、昇給額でしょうか。相手と相談して、実現可能と思われるちょうどよい程度に目標を設定します。目標達成のための、やり方・方法は、不正をしない限りは、自由に任せましょう。ただし、こまめな経過報告を要求しておきましょう。
目標を集団の構成員に公開することが大切です。こうすることで、相手は、目標達成の意欲がわきます。
目標達成時の褒美について決めておいてもいいでしょう。失敗時の罰則も決めておくとさらに良いでしょう。ただし、褒美も罰則も、実現可能なものにしておき公開してください。
(8)公平、公開
公平に公開して信賞必罰を実施します。計画した期日になったら、努力の結果を評価しましょう。評価は公平に行い、評価結果は、構成員に公開しましょう。計画を上回れば、賞を与えます、計画を下回れば、評価を下げます。
不正があったり、損害を被るときは、罰を与える必要があります。不正や損害は、良くないことつまり悪事ですが、その程度が軽い場合は、個別に呼び出して、詳しく理由を述べて叱ることになります。悪事の程度が重い場合は、処分も重くなります。でも、苛めになってしまってはいけません。
(9)悪事を公開する
上司や親は、自分の悪事や、全体状況の悪化を部下や家族に隠してはいけません。隠していても悪い噂となり広まってしまいます。悪い噂が広まってしまうと、集団の内部での信用を失うことになり、集団の一体感が無くなります。遵法精神が徹底された近年の社会では、法律違反行為の隠ぺいがあれば、組織の存続ができなくなります。したがって、事業状況の悪化については、直ちに対策を練り、できるだけ早く処置を実施する必要があるわけです。
(10)自分の都合を公開する
日本では封建社会の江戸時代からの習慣で、集団の中では、下っ端の個人的な都合の公開は、悪いこととされがちです。時代劇に出てくる最悪の例では、殿様の我儘な要求(家来の妻を側女に召し上げる)は許されて、下級武士のあたりまえの要求(妻の召し上げを断る)が切腹の罪とされるがあります。江戸時代では、身分・役職は生まれながらに決まっており、出世はありません。現代でも、個人的な出世希望を公言することが、はしたないとか言われたりします。
戦国時代は、下剋上という言葉があり、裏切り、兄弟殺し、親子殺しなど当たり前の時代でした。今でも、戦国時代に倣った、身内同士の騙し合いや足の引っ張り合いの派閥争いがあったりします。
日本には、以上のような集団の活力を削ぐ方向での古い価値観がまだまだ見受けられることに、気を付けなければいけません。
家庭生活で、大人が体面を保つだけの小遣いを要求したり、子供が欲しいおもちゃを要求することは、家族が互いを詳しく理解し、深い愛情を持つためのきっかけとして大切なことです。要求を述べ、必要性と正当性を説明することは、自己表現の練習であり、交渉事の訓練であり、人間関係そのものであり、自己実現の第一歩でもあります。
会社生活では、自分がどの程度の給料が欲しいのか、将来どの程度の役職に就きたいのか、こういうことを上手に公開し、組織で共有することは、活力ある人材がどこにいるかを見極める上で大切なことです。
どんな集団でも、その構成員が幸福にならないと、集団は幸福になりません。そのためには、構成員一人ひとりが希望する分け前、それぞれの都合、を公開し共有することが集団全体の幸福の前提になります。集団が派閥に分かれ足の引っ張り合いという負の内部抗争に明け暮れるようでは、外部からの攻撃に耐えることはできません。内部抗争もまた集団の正当な事業活動に転化してこそ、強い集団と言えます。
強い集団には強いリーダーがいます。リーダーの大きな役割は、集団を大きくする夢を語ることです。夢とは、リーダーが高く上り、構成員をさらに引き上げていくことになる話のことです。会社なら、努力した全員が昇給、昇格が見込めるという夢です。家庭なら、一緒に楽しく過ごす時間の拡大、健康的で美味しい食事、美しい衣服、快適な住宅、豪華な家財道具、おもちゃ、レジャーに出かけるなどでしょう。
(11)約束を守る
一度した約束は必ず守るようにしなければいけません。約束を守ることが信用を築くことです。約束を破るとそれまで築き上げた信頼が、崩れてしまいます。どの程度の信用が崩れるかは、それまでに築いた信用の大きさに依存します。
約束を守るためには、実現可能なことだけを約束するしかありません。安全第一で確実なことだけを約束するか、不確実なことがあっても努力でなんとかするのか、それともまったくの偶然に頼るのか。誰でも無意識の内に、確率、確度、精度といった数学の考え方を入れて計算しています。
私は、「信用は命より大切だ」と考えています。人間は、恐らく、自分の社会的信用を完全に無くしてしまうと、自分の人生を生きる意味をまったく感じられなくなるはずです。信用がない人、悪人や裏切者は、命が尽きても、後世に不名誉を語り継がれ、子孫を苦しめます。このように、信用は死んだ後も評価され続けるため、命より大切と言えます。
もし、約束が守れそうにないときは、すぐ相手に連絡し、相談をしなければいけません。実際に約束を破って、それを隠しておいて、相手に知られてしまうより、早め早めの対策が、信用を守ることにつながります。
約束を守らず信用を失っていく人の周りからは、徐々に人が離れていきます。
(12)嘘をつかず秘密も守る
嘘をつかないで正直でいることが、信用を守る基本です。また、秘密を守ることも、同様に、信用を守る基本です。
ずるがしこい悪人が、嘘をつけないあなたに、秘密を聞いてくることがあります。その場合は、秘密を打ち明けてはいけません。「そういう質問に、回答することはできない。回答できない理由も言えない。」とだけ説明してください。
(13)褒める
人を褒めてあげましょう。人の長所を見つけてあげましょう。その人の好きなところを、指摘してあげましょう。
成功した人を妬まないことです。人の手柄、部下や同僚の手柄を横取り、泥棒してはいけません。人の成功を一緒に祝いましょう。その人の努力を聞き出し、感心しましょう。
失敗した人を憎まないことです。公的に、罪状判決を下す者は、裁判官という役職の機能です。裁判官となっている人間そのものでは、ありません。罪を償わせるのは、刑務所という機関です。失敗した人が、赤の他人であれば、あなたは気にする必要はありません。失敗して弱っている人を攻撃することは、卑怯者のすることです。
身近な仲間が失敗したら、その人の立場と状況をよく調査してみましょう。そして、失敗の原因を知り、その人の落胆に同情し、失敗をリカバリーしてあげましょう。その後冷静になってから、あなたの受けた被害で、許せることは許し、許せないことは償ってもらいましょう。
人の悪口を言わないようにしましょう。「私の短所を教えてくれ」と言われても、その人の短所を指摘してはいけません。そんなとき、「短所は自分で気が付かなければならないものだ」と教えてあげてください。長所でないところは、短所、あるいは普通なのだから、長所だけを褒めればそれで充分です。
特に、陰口をしてはいけません。むしろ、陰褒めをしてください。また、陰で、あの人に期待すると言っておきましょう。「あの人はここがダメな所よね」と聞かされても「そうそう」と同意してはいけません。「知らない、興味ない」と話を逸らしましょう。
(14)己の力不足を知る
人は、一人では、大したことはできません。私はつくづくそう思います。だから人は、集団を作り、力を合わせて、色々なことを成し遂げるようにしています。過去の人や遠く離れた人の知識を生かすために言葉や文字があります。ここに、私が書いたことは、一度は誰かが言ったことです。私は、そんな優れた人の言葉の真似をして言っているだけです。人は、自分の知識が不完全であり、腕力や財力、信用、知名度も所詮僅かであることを自覚しないといけません。
一人一人は小さな存在にすぎないという問題への対策は、「分担と協力」です。あなたも私も、人の助けがないと、実は何もできないのです。分担と協力を上手にするためには、意思疎通が第一歩です。
(1) | 調子どうと聞く |
---|---|
(2) | 場を設ける |
(3) | 気持ちに共感 |
(4) | 活躍を見たいと期待 |
(5) | 善意を確認 |
(6) | 自主性を促進 |
(7) | 実現可能な目標を設定 |
(8) | 公平、公開 |
(9) | 悪事を公開する |
(10) | 自分の都合を公開する |
(11) | 約束を守る |
(12) | 嘘をつかず秘密も守る |
(13) | 褒める |
(14) | 己の力不足を知る |
人からの活かされ方
(1)愛想よく応える
挨拶には、愛想よく元気に応えましょう。
初対面の挨拶で、相手を上から下までジロジロと撫でまわすように見たり、相手の外見の欠点をいきなり指摘したりする失礼な人もたまにいます。相手をよく知ろうと思えば思うほど、無意識の内に、ジロジロと観察したり、思わず欠点を言ったりすることがあるからです。そういう失礼な場面に遭遇したら、「初対面でジロジロ見られると気になります」、「初対面でそういうことを言われるのは失礼かと存じます」と切り返しましょう。何かいやなものに例えられたら、「それ(○○)ではありませんから」と切り返しましょう。切り返すだけの精神力がないと、この世を渡ることはできません。もしあなたに、吉本新喜劇のお笑いの心得があれば、乗り突っ込みをしてから、最後に「それ(○○)ではありませんから」と切り返しましょう。
(2)マナーを守る
親しき仲にも礼儀あり、家庭でも、家族でも、気持ちよく過ごせるようマナーを守りましょう。
親は、子供に、家庭だから許されること、会社で許されること、公共の場で許されることの範囲を教え、実際に演じて見せる必要があります。マナーの基準は人により異なりますから、よく知らない人との付き合いで失敗はつきものです。失敗した場合の、謝り方も練習で演じておくことが必要です。
(3)共感に感謝
自分の気持ちに共感してもらったら、相手に感謝しましょう。喜びも苦しみも分かち合うことです。分かち合う喜びは、倍に増え、分かち合う苦しみは半分に減ります。
だれでも、自分の話を聞いてもらうことは好きですが、興味のない話を聞かされるのは苦痛です。話を聞いてくれる人が、その話に必ずしも興味があるわけではありません。話を聞いてくれる人が、金品の見返りを期待していることは、ごく普通のことです。相手によって、その場その場で、ふさわしいお礼をする必要があります。たいしたお礼もできないのであれば、相手の時間を奪ってしまう話し過ぎには、くれぐれも注意しましょう。
(4)期待されて喜ぶ
相手から期待されることは、喜びです。素直に喜びましょう。しかし、出来そうもないことや、成功の確率が低いことを、期待されるときもあります。そういう時は、はっきりと状況を説明し、不安を述べましょう。
(5)小さな親切から
相手との関わりのなかで、微笑みかけて話しかけ易くしましょう。この小さな心がけ自体が、善意であり、善行です。無理をせず、誰にでもできるはずの小さな親切からしてみましょう。
些細な行動にも、人のためを思ってすることで、あなたの行動、言動すべてが美しく光り輝くことになります。お化粧やファッションに気を遣うように、目つき、表情、振る舞いと言葉に気を遣う練習をしましょう。
(6)自分にできることから
あなたには、趣味のクラブ活動、仕事、ボランティア、勉強といろいろ役割を果たす責任があります。役割分担の範囲は、無理な背伸びをせず、自分一人でできることから、始めましょう。自分が楽しいと感じ積極的に取り組めることが、役割分担に向いていることです。
自分の能力を拡大していくように、新しい分野へ挑戦していきましょう。挑戦は、知識の吸収、練習、本番と段階を追うものです。役割分担するなら、知識の吸収、練習を済ませておくべきですね。
楽しいこと、好きなことは、自主的に始められますし、成功の確率が高いのです。新しいこと、難しいことを行うときは、苦しい、嫌いだと考えずに、楽しい所、好きな所を見つけて、楽しい、好きだと考えてから取り掛かりましょう。楽しい、好きだと考えながらする十分な練習が自信に繋がります。
(7)工夫して実現
いつまでに、どの程度の成果を上げられるのか、自信がある範囲で、目標を設定しましょう。目標達成時の褒美も教えてもらいましょう。失敗時の罰則も一度だけ見ておきましょう。
やり方は自由に工夫させてもらいましょう。でも、やり方が良く判らないときは、素直に質問・相談をして教えてもらいましょう。
目標達成の意欲をずっと維持しましょう。
日数を要する計画であれば、途中途中で進行状況を報告しなければいけません。最後の日に、できたかできなかったかの結果報告だけでは、不十分です。大きな事業も、小さな仕事に分解して一段ずつ成し遂げていくだけです。
(8)いずれ公開される
目標・計画と進行状況は、集団の構成員に公開されるという心構えでいてください。集団の構成員には、隠し事はできません。まして、公共事業や会社事業は、国民や株主に中身を公開する義務があります。
ばれない不正はありません。一緒に生活している家庭では、隠し事は不審な行動からばれてしまいます。どんなに頑張って不正を隠しても隠すという行動が、あなたの品格を落としてしまいます。反対に、成功は敢えて自慢する必要がありません。どんなに頑張って成功を隠しても成功したという自信あふれる行動が、あなたの品格を高めてしまいます。あなたが公正か不正かで、他人が感じるあなたの品格が自動的に上下してしまうのです。これが、天罰とか神の裁きと呼ばれるものの正体ではないかと私は考えています。
計画した期日になったら、結果は評価されます。評価が公平にされるように、結果を上手に報告してください。 成功したら成功した理由を、失敗したら失敗した理由を考えてください。反省と改善点を見出すことで、次回の成長につながります。
不正をしたり、損害を出したときは、罰を受けることになります。落ち着いて罰を受け入れるしかありません。
(9)悪事を責任者に連絡
自分がした悪事や、状況の悪化などは、上司や親に隠さずすぐに報告しないといけません。悪いことを隠しても、必ずばれてしまいます。悪いことを隠すためには、嘘をつくことになりますから、二重の罪を犯します。ばれる時が後になればなるほど、損害は大きく取り返しがつきません。
(10)自分の都合も
日本には、戦国時代の下剋上に象徴される、騙し合いと暴力の価値観や、身分制度が固定された江戸時代の価値観がまだ残っていて、なかなか個人の希望を公表することは、難しいものです。それでも、自分の都合を公開し、なんとか希望を叶えてもらわないと、集団の中で、自分がどんどん不幸になってしまいます。
家庭でも、会社でも、どんな集団でも、自分の都合は公表しないと相手に伝わりません。伝える、時期と相手をよく考えて行動してください。国家への意思表示は、選挙の投票しかありません。あなたの棄権は、あなた自身を活かさないという意味です。
自分の都合は、他人から見れば所詮ただの我儘にしか見えないものです。でも、権利の行使であれば、その権利があることに感謝して、正々堂々と使えばいいと思います。それでも、有給休暇の場合なら、休暇中に他の構成員に負担を掛けるため、事前の調整や配慮が必要となります。自分の都合を優先して叶えてもらうということは、誰かが負担をしているということです。だから所属する集団への、代償が必要となります。状況によっては、収入減少や降格が代償となることも覚悟しなければなりません。自分の都合が叶うときには、集団への感謝が必要です。
将来の昇給が目的なら、あなたがもっと成果を出せるという集団への貢献を明確にしないといけません。昇進願望において、下剋上を連想させるような発言や行動は慎むべきです。あなたが優秀なほど、上司は警戒し怯えてしまいます。本来なら上司が部門を大きくしていく展望を語り、部下を昇進させていく夢を語るはずです。もしそういう夢のある上司に恵まれなかったら、昇進は諦めるか、部門や会社を飛び出す覚悟が必要となります。
(11)約束の守り方
約束を守るためには、できること、善行だけを約束することです。できないこと、悪事を約束してはいけません。また、約束が守れそうもない状況になってきたら、速やかに約束した相手に連絡して相談しなければいけません。
社会のルール、マナー、法律は、社会とあなたの約束です。知らなかったという言い訳は、通用しません。
約束を守らなかった人に対して、家族の一員であれば、叱り、罰を与えなければいけません。罰の内容は、約束をするときに両者で決めておくことが望ましいでしょう。罰があるということは、約束を果たしたときの褒美もあるということです。でも、本当の褒美と罰は、信用の増減であることを教えないといけません。家庭教育で、信用は命と同等がそれ以上の重要度があることを徹底しておかなければなりません。信用の減少の具体例は、約束を守らない人は、次は相手にしてもらえなくなるということです。信用を失い、人から相手にしてもらえないことで、自由に生きていくことが段々とできなくなるということです。
会社で、約束を守らなかった人は、懲戒、減給、降格、解雇等の処罰を受けなければいけません。悪の組織であれば、裏切者は殺されます。罰を与えないと、約束を守った者に示しがつきません。
(12)嘘と秘密
質問されたことに、嘘をつかず正直でいることは、比較的容易なことです。事実をありのままに言うだけのことです。 ただし、話す内容は丁寧で優しい言葉で話す必要があります。攻撃的な単語を使うと悪口になりがちです。
「人の口に戸は立てられぬ」といいます。漏らされて困る秘密は、誰にもに話してはいけないはずですが、実は秘密を守り切ることはとてもできない相談です。どんな意思の固い人でも、自白剤という薬を飲まされると秘密をペラペラ話します。ですから、できるだけ、秘密の話には加わらず、秘密も作らない生活を心がけると良いでしょう。
余計な秘密を作らないためには、不正をしないことです。不正をすると、秘密として隠したい悪魔の誘惑に駆られます。不正という悪事を為したいう一回目の罪に、悪事の隠ぺいという二回目の罪を重ねてしまうことを考えれば、「悪事を公開することが合理的である」と結論つけられます。
秘密にしても良いことは、正しいことだけです。不正や悪事を秘密にしてはいけません。
正しく秘密と決め公開しないと約束したことは、話してはいけません。秘密については「そういう質問に、回答することはできない。回答できない理由も言えない。」とだけ説明して、秘密を暴こうとする人からすぐ逃げ出してください。ずるがしこい相手の質問に嘘の回答をしても秘密がばれてしまいますよ。
嘘をつく人は、案外多いものです。正直な人でも優しい言葉で事実をぼかされる場合もあります。日本語が通じない外国人との交渉では、嘘か本当かなかなか区別がつきません。
もし人から嘘をつかれたら、その人とのお付き合いをしばらく避けるとよいでしょう。嘘をついた人が謝ってきても、また嘘かも知れませんので、嘘でも害のない範囲で付き合いを再開しましょう。いずれにしろ、嘘つきの話は、慎重の上にも慎重に見極める必要があります。
(13)褒められたら感謝
褒めてもらえたら、素直に喜びましょう。褒めてくれた人に感謝しお礼を言いましょう。
褒めてもらえる一方で、人から妬まれ、悪口を言われることもあります。そういうことがあっても、聞き流し相手にしないことです。悪人は、あなたが、怒り返したり、悪口の応酬となることを望んでいるから、攻撃してくるのです。嫉妬や悪口に対しては、「そういう考えの人がまだいるかもしれないけど、いつか認めてもらえるよう努力を続けたい」と言っておくことです。
人の手柄、部下や同僚の手柄を横取りする泥棒も時にはいます。信用できないと分かった人をもう相手にしない、距離を置くことが最も良いことです。やはり。怒りや悪口で返してはいけません。
あなたが仮に失敗をしてしまって、反省し弱っているときに、あなたを過剰に攻撃してくる関係のない人がいれば、嵐が過ぎ去るのを待つか、逃げ出すことです。あなたは、冷静になってから、失敗の原因を思い出し、今後の進め方を考え直しましょう。また、あなたの失敗で発生した被害を修復し、償う必要があります。
(14)己の実力を知る
驕り高ぶらず自分の実力を客観視してみましょう。身近で目標となる人を探すことが、客観視の第一歩です。とんでもない大人物だけを目標にすると客観視が難しいです。また、資格試験に合格していれば、実力の証明になります。
人に活かしてもらうには、人に使ってもらうことになります。それには、入学試験、入社試験、面接、オーディションで、実力を披露しないといけません。知識を暗記するだけでなく、使ってみる実演練習をすることが、実力を養う近道です。
人は協力して目標を達成するために集団、家族・学校・会社・地域社会・国家を作っています。あなたも人と集団への協力をすることによって報酬を得て、自分の都合である私的な夢を実現し、幸福を感じてください。
(1) | 愛想よく応える |
---|---|
(2) | マナーを守る |
(3) | 共感に感謝 |
(4) | 期待されて喜ぶ |
(5) | 小さな親切から |
(6) | 自分にできることから |
(7) | 工夫して実現 |
(8) | いずれ公開される |
(9) | 悪事を責任者に連絡 |
(10) | 自分の都合も |
(11) | 約束の守り方 |
(12) | 嘘と秘密 |
(13) | 褒められたら感謝 |
(14) | 己の実力を知る |