第三部 第二十章 喜怒哀楽の表し方

喜怒哀楽とは、喜び、怒り、哀われみ、楽しみの感情で、その頭文字を並べて、人間の感情全体を現します。ここでの哀われみは、普通の悲しみとしてよいです。仏教用語の慈悲の悲は抜苦の意味であり、普通の悲しみとは意味が異なることを頭の片隅に覚えておいてください。

さて、ここまで仏陀の教えについて私の解釈を述べさせていただきましたが、ここでごく普通の日常生活で皆さんや私が自然に感じる気持ちである喜怒哀楽は、仏陀の教えではどこまで感じ表現してよいものかについて、これから考えて見ます。

私の解釈では、八正道の正思惟とは、喜び・楽しみ・感謝、同情・慰めであると書きましたように、喜びと楽しみは善行ですから遠慮する必要はありません。積極的に喜び、楽しむことが大切です。そのとき気に留めて欲しいことは、一人でも多くの人が幸福になるように喜び、楽しむことであり、分かち合う喜びは二倍になるので、喜び、楽しみを周りの人に分け与えてあげるることだと思います。

どのようにすればあなたの喜びが周りの人に素直に受け取ってもらえるか、その方法は重要です。例えば、スポーツ選手が勝利のインタビューでどのように喜びを表現しているか、その姿が、とても参考になります。まず家族やファンそしてチームメンバーに感謝を捧げていますね。これが喜び、楽しみを周りの人に分け与える行為です。あと相手チームが強く立派な戦いをしてくれたことつまり相手選手の健闘にも感謝しています。相手がいてこそのゲームですからこの感謝も大切です。これを聞くことで周りの人はあなたの喜びを受け入れる準備ができる訳です。それから勝者は、上手にできたところは練習してきた成果です本当にうれしいです、といいますね。最後に勝者は、再び皆さんに感謝してガッツポーズをとります。

スポーツの勝利インタビューが感動の集大成とすれば、そこへ至るまでのプレー中の感情・態度においても、喜び、楽しみの表現がとても大切であることがわかります。試合を戦う両者とも、勝利を目指して最後までひるまず勇気を奮って正々堂々と全力を尽くすします。それだけでなく、ゲームをすることが喜びであり、楽しいという気持ちを表現することで、ファンの皆さんと選手が一体になり楽しさを感じます。たとえ負け試合でもプレーする喜びと楽しみを最後まで表現できればファンは次の試合も見に来ててくれますね。

素晴らしい選手とは、プレーもインタビューもすべてが楽しさにあふれています。私たちのごくごく普通の生活や仕事でもスター選手と同じように喜びと楽しみを表現できるように工夫していきたいものですね。そうすればごくごく普通の生活や仕事にも喜びと楽しみが満ち溢れてきます。

勝利インタビューが終わり、やがて、選手は次の勝利に向けてまた練習に楽しく励みます。いつまでも勝利の美酒に浸り続けることは致しません。敗者もまた勝利に向けてまた練習に楽しく励みますね。私たちもいつまでも浮かれ続けることは止めて喜びを胸に秘めて普通の生活や仕事に励む必要があります。

自分の喜び、楽しみの感情を、他人に伝えるには、手順と時間がかかります。映画「男はつらいよ」を見ていると、寅さんは自分の喜び、楽しみ、哀愁の感情をうまく伝えられなくなり、逆に怒ってしまって家族と喧嘩してしまうシーンが毎回描かれています。観客として最初の数回は笑えるシーンですが、何度も見せつけられると辛く切なくなってきますよね。口八丁で商売上手のテキ屋さんなのに、家族に対しては何故か口下手、家族に対して喜びと楽しみを伝えるには、自分の心を表現するテクニックと練習が必要なんですね

ところで、時にはあまり大げさに喜んではいけない場所と時間もあるという事実をしっかりと理解しておきましょう。このような場所では慎み深くしていることが大切です。

怒りについては、十悪に記されているように禁止です。怒らないための方法は別の章に記入してあります。

哀われみ、悲しみについてどこまで感じ表現してよいか、ここが大切なポイントです。仏陀の教えに沿って考えると次のようになると私は解釈しています。

まず、哀われみ、悲しみを感じて構いません。ただし、哀われみ、悲しみを貪ってはいけません。つまりいつまでも哀われみ続けたり、悲しみ続けることはいけないことです。哀われみ、悲しみからいつか離れることが必要です。

哀われみ、悲しみから動揺して無駄口、悪口などを発してはいけません。人前であまりに大声で泣いたりすることは大抵の場合は相応しくないということです。まして感情に流されて十悪にある悪行為をしてはいけません。心の中で哀われみ、悲しみの原因を冷静に正しく認識してください。

スポーツ・ゲームの敗者の場合、自らの敗北に打ちのめされていますが、それでも第一に相手の勝利を讃えることが大切です。そしてここまで来ることができたのは、周囲の皆さんの協力があったからと感謝することです。こうすることであなたは敗北を冷静に受け止める準備ができます。敗戦の弁を述べるときも感謝を表明することで、周囲の人もまた敗北を受け止める準備ができます。その後負けたにもかかわらず良かったことを探してみます。プレーに喜びと楽しみを表現できていたら、たとえ負けてもあなたとあなたのファンには十分な感動があります。そして再起を誓いましょう。

愛する人を亡くす事ほど悲しいことはありません。愛する人を亡くした悲しみが消えるには、長い時間が必要ですが、その時間はあなたの気づきのための時間です。あなたが生活や仕事を喜び楽しみながらこれまで通り行うことが亡くなった人の希望です。そのことを忘れてはいけません。亡くなった人は死により、自らの席を次の人に譲ったのです。亡くなった人が生き返ることはありません、生き返らせるという間違った考えに囚われるとあなただけでなく周りの人をさらに悲しませてしまいます。愛する人に感謝を捧げ、良い思い出を語り継ぎ、他の人も同じような良い経験できるよう手助けすることはきっと良いことです。悲しみを乗り越えてやるべき善行は他にも多々あります。

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(更新日: 2017年03月23日)
幸せ研究室