第三部 第二十三章 戦争と殺人

現実の世界では戦争と殺人がまだあります。殺人は十悪の殺生戒に反します。戦争と殺人は、怒り、貪りを原因としています。攻撃を受け人が死に、哀われみ、悲しみを感じたことへの報復を正当化することで、さらに戦争と殺人の連鎖が続いてしまいます。悲しみの虜であり続ける限りこの報復の連鎖を断ち切ることはできないという考え方も知っていただきたいと存じます。

戦争と殺人を防止するには、第一に殺戮の原因を作らないことです。その方法が八正道になります。

私たちは、起きてしまう悪事に対応するために、国内では法律を作り運用しています。例えば、殺人犯を捕縛して刑法で裁き刑に服させています。

また、国家間の交渉を行いルールを取り決めています。最近の戦争は、国家間の共同の警察機能の体裁をとり、国家間で協議して世界全体として正義を行うという形式をとりつつあります。

まだ戦争と殺人の無い世界は実現できていませんが、国家も法も、仏陀の教えの理想に向かってゆっくりですが着実に進歩しているように思えます。

究極の問いとして、もしあなたが軍人、警官、死刑執行人の公職にあり、職務として殺人をしなければならない状況のときこの殺人は仏陀の教えとして許されるかどうか、があります。

私の解釈は、司令長官の場合は、法律が認めた場合でさらに自分の市民を守るための道徳的に正当な自衛権の発動だけが許され、それ以外の場合(侵略戦争、テロ行為など)は、如何なる時も許されない。また、命令を受ける下級職の場合は、法律が認める命令による殺人は許されるというものです。ただし、殺される相手を憎まないこと、悲無量心の気持ちで殺される相手の苦しみに同情し、それを取り去る気持ちが大切です。正念と正定を守り一人でも多くの人の幸福につながると信じて公務を遂行してください。あなたの心の健康を守る上で、日常生活では十悪を犯さないよう八正道に精進することが大切です。

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(更新日: 2017年03月23日)
幸せ研究室