2. 子音 [r] | 英語の発音 メモ |
(音声学のIPA(国際音声記号)が本来認めている英語の文字"r"に対応する音声記号は、歯茎接近音の[ɹ]です。 しかし、英英辞典や英和辞典の発音記号では、[r]を使います。 IPA分類の音声記号[r]は、歯茎ふるえ音と呼ばれていてスペイン語やイタリア語さらには江戸っ子のべランベェ口調の本物の巻き舌音に割り当てられた記号です。 英英辞典や英和辞典で[ɹ]を使わず[r]を使う理由は、歯茎ふるえ音を英語では用いないため、[r]と[ɹ]の混乱が起き無いからです。)
声帯を振動させながら、 上下唇をリラックスして少し開いて、 舌先を上前歯の歯茎裏に狭く接近させて、そこから息を出して細かく細かく連続して振動させて起こる音。 ただし、口蓋帆(こうがいはん:口の中の天井の喉奥の方)を持ち上げて、息を鼻腔には流しません。 実際には使わないが、息が続く限り音を出し続けることもできます。
( [r]音を出している間は、舌先を上前歯の歯茎裏につけません。 音を出す直前に、音を出さないならば、舌先を上前歯の歯茎裏に軽くつけて、息の流れを止めて置いても構いません。 [z]音と[r]音は舌の位置的にとても近い音で、[z]音の方が、舌先が歯茎裏に摩擦する程に近いです。)
[r]の音は日本語には、存在しない音です。日本人には、一瞬の籠もったウ音で始まり響きが細かく艶があるビブラートが掛かった強めの籠もったラ行に聞こえてしまいます。
日本語のラ行、例えば「ル」は、舌先で上前歯の歯茎裏を弾いて一瞬の子音を出してから、舌先を離して「ウ」と発音しますから、[r]とも[l]とも異なる別の音(歯茎はじき音)です。ラ行に聞こえるからといって、日本語のラ行で"-r-"を発音すると、聞き手は混乱し、"-z-, -d-"と聞こえてしまうこともあります。
英語の[r]と[l]の正しい発声方法を知れば、日本人が苦手とされる[r]と[l]の音の僅かな違いも聞き取り易くなると言われています。
日本人が、[r]音を出して感じる練習方法には、まず[s]音から[z]音へ変化しながら、 それから舌先を歯茎裏から徐々に離して行き、 [z]音から[r]音へと変化させる方法があります([s]→[z]→[r])。
単語の綴り文字では、"r-", "-rr-", が、[r]の音となります。母音文字が先行する"-ar-"の多く、他の子音文字が先行する"br-", "cr-", "dr-", "fr-", "gr-", "pr-", "shr-", "tr-", "wr-", "-ry"も、[r]の音となります。 "-ar"の一部, "-air", "-ear", "-er", "-ir", "-ire", "-or"の一部, "-our", "-ur"は、母音としての[ɚ]です。
race, rack, read, red, rich, right, rip, road, root, run, rush, rye,
("rh-"の"h"は発音しません), rhapsody [rǽpsədi], rhetric [r'ɛtərɪk], rhinestone [ráɪnstɔʊn], rhododendron [roʊdəd'ɛndrən], rhhyme [raɪm],
arc [ɑrc], arm [ɑrm], art [ɑrt],
bar [bɑr], bare [bɛr], barrel [bǽrəl], car [kɑr], care [kɛr], carry [kǽri], dare [dɛr], dark [dɑrk], ear [ɪr],
[ɚ], early ['ɚli], earn [ɚn], earth [ɚθ],
far [fɑr], fare [fɛr], farm [fɑrm], garb [gɑrb], hard [hɑrd], hare [hɛr], harm [hɑrm], jar [ʤɑr], karat [kǽrət], lard [lɑrd], mar [mɑr], mar [mɑr], mare [mɛr], marinate [mǽrənèɪt], narc [nɑrk], narrreit [nǽreɪt, nærèɪt], narrrow [nǽroʊ], oar [ɔr], par [pɑr], paradise [pǽrədàɪs], part [pɑrt],
[ɚ], particular [pɚt'ɪkyəlɚ],
rare [rɛr], sarcasm [s'ɑrkæzəm], sari [s'ɑri], tar [tɑr], tarp [tɑrp], variable [v'ɛriəbəl, v'ær-], varriety [vəráɪəti], vary [v'ɛri, v'æri], war [wɔr], ward [wɔrd], warm [wɔrm], warry [w'ɛri], yard [yɑrd], ("-re"の"e"は発音しません),
brain, craft, dress,
era, erace, erect, erode, error, erupt,
aerial, berry,
[ɚ], berth,
cereal, ceremony,
[ɚ], certain, certify, cervix,
derail, derelict, deride, derogatory, derrick,
[ɚ], derby, dermatitis,
eerie, ferocity, ferry,
[ɚ], ferment, fern, fertile, fervor,
geranium, geriatrics, gerrymandering, gerund,
[ɚ], gerbil, germ, German,
herald, here, heritage, hero, herring,
[ɚ], her, herb, herd, hermit, hernia, herpes, hers, herts,
pierce,
[ɚ], skier,
[ɚ], jerk,
kerosene,
[ɚ], kernel,
tolerate,
[ɚ], alert,
mere, merit, merry, American,
[ɚ], merchant, merge, mermaid,
[ɚ], nerd, nerve,
[ɚ], coerce,
peremptory, peril, peroxide, peruse,
[ɚ], per, percent, perfect, perhaps, perjure, perk, permanent, pernicious, perpetual, person, pert, pervade,
serene, Sergeant, serial, serrated, serum,
[ɚ], sermon, serpent, servant,
terrace, terrible,
[ɚ], term, terse, alter,
veranda, verify, very,
[ɚ], verb, verdict, verge, vermin, vernacular, versatile, vertical, verve,
[ɚ], were,
xerox,
zero,
friend, group, chrysalis,
irony, irrational, air, fair, chair, direct, mirror [m'ɪrɚ], spirit, viral, virus [váɪrəs], wiry [wáɪəri],
[ɚ], iron [áɪɚn], bird, circle, dirt, firm, first, girl, sir, chirp, virgin,
[ɚ], fire, entire, acquire,
cockroach, already, comrade, enroll,
oral, orbir, orchard, order, ore, organ, orient, ornate, orphan, orthodox,
[ɚ], or,
practice, precise, price, probe, prune, pry,
trace, tread, trial, troll, truck,
uranium, urine,
[ɚ], urban, urchin, urge, urn,
wrap, wrestle, write, wrong, wrung, wry, ("wr-"の"w"は発音しません),
x-ray,
pyramid, tyrant,
[ɚ], syrup [s'ɚəp, s'ɪrəp],
car [kɑr], far [fɑr], steer [stɪr], air [ɛr], door [dɔr], err [ɛr, ɚ], our [ɑr, aʊɚ],
[ɚ], letter, sir [sɚ], actor [ǽktɚ], purr [pɚ], occur [ək'ɚ],
以下は、動画によるJenniferの説明の概要です。
JenniferESL Lesson 5a - R - English Pronunciation
"R"の発音を、まず母音として、次に子音として、さらにLとの組み合わせで学習します
母音としての"R"は、 [ɚ]半開-中唇-中舌-弱長母音 です。
sir, Jennifer,
特徴は始めから終わりまで有声音であること。口唇を少しだけ丸めること(日本語の「う」ほどではないが「え」よりは丸める)。舌の形と位置が最も大切です。舌先は上げて前歯の裏の歯茎に近づけますが決してどこにも触ってはいけません。[z]の音の舌と歯茎より少し離します。舌の中ほどは凹ませ後ろは上げます。舌の両側も上の歯につくまで上げます。舌と上の奥歯で筒にするわけです。また、舌を喉の奥へ後退させてはいけません。巻き舌の音ではありません。
earth, heard,
serve, certain person, perfect, term,
dirt, bird, shirt, first, circle,
word, work,
journalist, journal,
turn, hurt, fur, curtain, Thursday,
つぎは、[ɚ]の音に強いアクセントがない場合です。
enter, teacher, other, father, faster,
motherhood, energy, computer, perhaps, summertime,
JenniferESL Lesson 5a (continued) - R - English Pronunciation
ここでは、 [ɚ] の音が他の母音の直後に続く連続母音の場合です。( 連続した母音は音節としては一つと数えます)
ear [ɪɚ] (ただし、英和辞書の多くは英国式に[ir]と書かれています)
air [ɛɚ] (ただし、英和辞書の多くは英国式に[ɛr]と書かれています)
or [ɔɚ] (ただし、英和辞書の多くは英国式に[ɔr]と書かれています)
are [ɑɚ] (ただし、英和辞書の多くは英国式に[ɑr]と書かれています)
ここで多くの辞書とは書き方を変えてあるのは、母音としての"R"をきちんと知るためです。
音は、最初の母音([ɪ]など)から滑らかに変化して[ɚ]になります。これらの単語は音節が一つなので、さらに二つの音を合体させます。
口をほとんど開かない単語から開く単語への例です。
tear (as in crying)(涙)
tear (ar in repping)(引き裂く)
tore
tar
[ɑɚ], car, heart,
[ɛɚ], air, care,
[ɪɚ], dear, beer, cashier, weird, here,
[ɔɚ], or, more, door, four, warm,
[ʊɚ], tour, poor, sure,
次は短いけど音節が二つの例です。(母音が3個続くと音節に分けるようです)
fire [faɪɚ] (音節に分けると fi-re[faɪ - ɚ])
hour [aʊɚ] (音節に分けると hou-r [[aʊ - ɚ])
普通は、音節が違う母音は分けて 発音します( 滑らかに変化させて混ぜません、くっつけるだけです) 。つまり、二個連続する母音のように一体にしません。
ところで、さらに音節にまたがる母音たちを滑らかに変化させて発音することもできます。(早口のときかもしれません) そのとき、[y]と[w]になります。
fire [faɪɚ] → (滑らかに変化させて発音する) [fyɚ]
hour [aʊɚ] →(滑らかに変化させて発音する) [awɚ]
練習です。
[aɪɚ], fire, tire, hire, liar,
[aʊɚ], our, flour, hour,
[ʊɪɚ], employer,
JenniferESL Lesson 5b - R - English Pronunciation
いよいよ、子音としての"R"の音[r]ですが、まず、母音としての"R"[ɚ] を復習しておきます。
まず、口唇を少しだけ丸くします(Round your lips a little)。舌の位置は、舌先を前歯の裏側の歯茎にぎりぎりまで近づけます(Raise the tip of tongue towards the hard bump behind your upper front teeth)、舌を歯茎につけてはいけません(BUT don't let your tongue touch the bump ) 、舌の中央は少し凹ませます(The center of the tongue is down)、そして後ろ側は持ち上げて硬いボールのように丸くします(The back of the tongue is raised and pulled into a tight ball)、舌の両側は上の両側の歯に軽く付くまで持ち上げます(The sides of your tongue touch the upper side teeth, do not pushing)。(復習終わり)
子音としての"R"の音[r]は、母音としての"R" [ɚ] と口唇と舌は同じですが、もっと短く早く音を出します(We make "r" as a consonant the same way we make "r" as a vowel, only it's done much faster. )
例, run [rʌn],
"r"を子音とするため、次の母音へ走りこむようにちょっとだけ発音します(When "r" is like a consonant, think of it "running" into the next vowel sound.)。
練習1
reach, rich, rain, red
ran, rock, run, rose, rookie,
room, right, round, Roy,
write, wrote, written, wrong, wrap, wrist
[r]と[w]の違いについて
[r] run [rʌn],
[w] won [wʌn],
[r] は、口唇の形が丸くなるのは少しだけで、そのままを次の母音に代わるまで保持します。[w]は、音と共に口唇の動きがあります。まず口唇をしっかりと小さく丸くすぼめそれから力を抜いて広げます。[r]は舌の位置と形が重要であり、[w]は口唇の形と動きが重要です。
white – right
why – rye
one – run
weed – read
way – ray
wed – red
JenniferESL Lesson 5b (second part) - R - English Pronunciation
単語のはじめの[r] も音節の始めの[r]も同じ発音です。
red, around,
ran, arrive,
road, kangaroo,
単語の中間に"r"があるとき、先行する母音にこの[r]を混合して、より一層子音的になります。
very, caring,
carrot, forest,
barroom, Jared,
単語が連続するとき、先行する単語の最後の"r"と後続の単語の母音がつながって発音されます。
tear it, far off,
fear alligators, Nor am I.
her office, poor aunt,
[t]、[d]と[r]の違い
ton, done, run,
[t]、[d]は、舌先を上前歯の裏側にしっかりつけて息の流れを止めてから破裂するように発音します。[r]は舌先を上前歯の裏側に近づけますがつけません、さらに[r]の口唇は、やさしく丸い形です(日本語の「う」ほどではないが「え」よりは丸める)。[t]、[d]の口唇は、もっとリラックスして力が抜けています。
[r]音で始まり[r]音で終わる単語の例 (発音はこれまでの説明通り)
rare [rɛr], rear [rɪr], roar [rɔr],
JenniferESL Lesson 5b (third part) - R - English Pronunciation
他の子音に[r]がつく場合です。まず最初に、
[fr] frog,
[f]と[r]をつないで次の母音へ進みます。[fog]となってもいけませんし、[furog]となってもいけません。他に特別な例は、
[kr] crazy
[pr] prize
[tr] train
です。ここで注意することは、[r]はもともとは有声子音でしたが、[k][p][t]が先行する[r]は無声子音になり次の母音で有声となります。練習です。
brain, break, broom,
draw, drew, drown,
frog, frown, fry,
grass, grain, grow,
shrink, shrank, shrunk,
crazy, crane, crash, scratch,
pray, project, prime, spray,
train, trip, tree, strum,
もう一度[r]の音の舌の位置を確認してください。[r]は舌先を上前歯の裏側に近づけますがつけません。
President Ronald Reagan,
JenniferESL Lesson 5c (second part) - R and L - English Pronunciation
いよいよ[r]と[l]が一つの単語に含まれている場合です。
[-ɚl] girl,
この場合、[r]は母音です。つまり[ɚ]の音で、口唇は、やさしく丸い形で、舌先を上前歯の裏側に近づけますがつけません。舌の両側は左右の上の歯に軽くつけ舌の中央は凹ませ舌の後ろは持ち上げ硬いボールのようにします。ここから[l]の音に進むには、口唇から力を抜いて広げて舌先を前歯の裏につけてそのままにして、舌の両側は上の歯から放して下へ行き舌の後ろは平たくなります。注意しておくことは、単語の最後で[l]の舌の形はそのまま維持していることです。つまり舌先は前歯の裏につけたままです。(日本人の癖、母音のウで終わることは、正しい発音ではありません。)
Carl, curl, earl, girl,
hurl, Merle, pearl, Shirley,
twirl, world,
(Shirley world は、[l]以外で終わるので舌の形は変わります)