第一部 第三章 八正道

八正道とは、善行を八つに分類したものです。それぞれに簡単に私の解釈を書きました。

(1)正見人々と物事の原因と結果を正しく見る
(2)正思惟喜び・楽しみ・感謝、同情・慰め
(3)正語優しい言葉で正直に話す
(4)正業人々の幸福のためになる職業に就く
(5)正命自分、家族、人々の命を大切にし親切にする
(6)正精進高い目標を定め、清い方法で前進する
(7)正念いまするべき仕事に集中する
(8)正定常に心を落ち着かせて穏やかな心持ちでいる

私の解釈

八正道の中身をもう少し掘り下げて見ましょう。

八正道の「八」は数の八、「正」は、正しい・真っ直ぐの意味で反対語が「邪」です。「道」は、人が守り行うべき道徳の意味です。つまり、八つの正しい道徳の意味です。

正見の「見」は、「眼で見る」より深い意味で、「見て考える」という意味です。正しい知識で考えなさい、合理的に考えなさい、ということです。見る対象は、は毎日の生活や仕事の物事だけではなく人々も入ります。物事よりむしろ人々をどのように見るかが大切です。簡潔に正見とは、「人々と物事を正しく見る」となります。仏教では、因果関係、つまり原因と結果の関係をよく持ち出すのでそれも尊重して、少し長いですが、正見とは、「人々と物事の原因と結果を正しく見る」とします。正見を実現するために、以下のことをしてください。

  1. 人々には善い面と悪い面が同居しているという事実を理解
  2. 人々にはそれぞれの立場があるという事実を理解
  3. 人々の善い面と悪い面は立場により変わるという事実を理解
  4. 人々の善い面を見つけると喜び楽しくなる、悪い面を見つけると苦しく悲しくなる法則を理解
  5. 人々の善い面を見つけるようにする
  6. 善い事をしたら喜び楽しくなる、悪い事をしたら苦しく悲しくなる法則を理解
  7. 善悪の判断は、一人でも多くの人が幸福になるかどうか
  8. 安心して相談できる親、先生や友人を大切にする
  9. 偏りなく幅広い意見を聞く
  10. 因果関係の判断が正しくできるよう科学の勉強をする
  11. 人間には判らないこともあるのだという謙虚さを持つ

仏教の用語で言えば、正見とは、四諦、三法印を理解することです。四諦、三法印については後の第二部で出てきます。

正思惟の「思」は「思う」、「惟」も「思う」の意味です、「思惟」も思うの意味です。理性で考えることは正見で出て来ましたから、正思惟とは、感情の思いのことです。感情を正しくしなさいということです。つまり、正思惟は、「喜び・楽しみ・感謝、同情・慰め」です。毎日の生活や仕事の一つ一つを楽しみ、結果に喜びましょう。たとえ悲しいことでも何か良い意味を見出して受け入れることです。誰でも人々から言葉、行動、金品で同情・慰め・支援・施しを受けています、それに感謝してください。相手の長所を見て好きになることも良いことです。相手の悲しみを聞いたら、同情して慰めてあげてください。悲しみを聞くと感情は揺れ動き悪意に染まりやすいものです、たとえ悲しみを聞いても、同情と慰めで心を満たしましょう。

正語の「語」は、「語る」や「言葉」の意味です。つまり正語とは、「優しい言葉で正直に話す」ことです。ただの正直ではまだまだ不足です。相手にうまく伝わるように相手に合わせた思いやりのある優しい言葉が必要です。相手が理解しやすいように、ゆっくりと少しずつお話することも大切なことです。相手を上手に褒めましょう。自分の喜びを上手に言葉で表現したり、感謝のお礼を述べることも良いことです。相手への好意も素敵な言葉で伝えてあげてください。同情や慰めの言葉は善意に溢れているように特に慎重に選びましょう。悲しみを伝える時こそ、人のせいにしないで慎重に言葉を選んでください。「目は口ほどに物を言う」ということわざがあるように、目つき・表情・態度でも意志を伝えることができます、口にする言葉だけでなく目つき・表情・態度にも気を配りましょう。

正業の「業」は仕事の意味です。つまり正業とは、「人々の幸福のためになる職業に就く」ことです。人それぞれに進む道は違ってよいのですが、正業ではその道が人々の幸福のためになることが求められています。自分の性格にあった大好きで得意な分野の職業を探しましょう。会社を選ぶときは、単に利益だけを追求する会社や、社会悪となる事業を選択しないでください。人々を喜ばせたり、人々の役に立てる会社を選びましょう。仕事を通して人々の幸福に貢献できれば、あなたは心の安定と自信を得ることができます。もしあなたがリーダーであれば、今すぐ会社や組織の目標をできるだけ多くの人々の幸福に定めてみましょう。給金を得る仕事だけが仕事ではないので、もっと広く業を行動全般と捉えても差し支えありません。自分が助けてもらったお礼をするだけでなく、困っている人を見たら自分ができる範囲で支援してあげましょう。(日本の仏教の「業」とここの正業とは違います。理由はこちら。)

正命の「命」は、ここでは「いいつけ」ではなく「いのち」の意味です。つまり正命とは、「自分、家族、人々の命を大切にし親切にする」ということです。まず自分の身体を健康に保ちます。身体を清潔にして食事に気をつけ衣服や住まいを整えることも大切です。次に妻や夫と正しい愛を交わします。さらに家族を大切に養います。そして、すべての世の中の人の命を大切にして、困っている人がいれば、親切をしたり寄付(仏教では布施といいます)をします。

正精進の「精」とは、純粋でまじりけのないこと、「進」は、どんどんあるいて進むこと、「精進」は、身を清めて修行に努力することを意味します。つまり正精進は「高い目標を定め、清い方法で前進する」ということです。目標とは、個人的な目標でもあり、会社や組織の目標でもあります。高いという意味は、何万人ものリーダーになるとか、億万長者になるという意味よりも、一人でも多くの人が幸福になることをするという意味です。良い目標が思いつかないときは、まずは身近な家族が幸福になるという目標を立ててみてはいかがでしょうか。清い方法とは、ルールを守るフェアプレーのことです。

仏教の最高の目標は、仏陀になる、つまり悟った人になるということです。そして、悟りへ至る道とは、この八正道のことです。

正念の「念」は、心にしっかりとどめておく、心をふらつかせないという意味です、つまり正念とは、「いまするべき仕事に集中する」ということです。ひとつの仕事をしているときは、他の事に関心を向けません。心が雑念に向いたらすぐ戻してください。そうしないと仕事が捗らないからです。

正定の「定」は、単なる「さだめる」より深い意味で、「さだめて、おさめて、しずまる」の意味で、安定の意味です。つまり、正定は「常に心を落ち着かせて穏やかな心持ちでいる」ということです。環境の急変化にも慌てず心を落ち着かせてください。

八正道は、喜び、楽しみ、感謝しながら、あるいは同情と慰めを伴って行うことですから、どこにも苦しみがありません。また物事の原因と結果を正しく見ることで、何事にも長所があることに気が付きます。そして高い目標に向かって毎日行う努力が進歩となり楽しみとなります。善行をひとつ行えば喜び、より上手に行えばさらに幸福になります。

八正道のこの解釈は、明るく楽しく元気よく、幸福になりたいという願いに積極的に応えて導かれています。

八正道では、正見が最初で正定が最後です。この順番が大切です。正しい知識、原因が何で結果が何という法則や、八正道の知識を知らないと、次の正思惟から崩れていき、次々と崩れて、正定はありえないことを意味します。正定から始まり七正道だけで正見になることは、無いのです。正しい知識は、親や先生の誰かから教わらないといけません。つまり、八正道のこの順番自体も、原因と結果の順番を意味しています。

八正道をご家庭や学校で違和感なく使えるように書き直してみました。

幸せになれる八つの約束

(1)心と物の正しい法則を学ぼう
(2)嬉しい、ありがとうと同情の気持ちを持とう
(3)優しく正直に話そう
(4)みんなに親切にしよう
(5)自分とみんなの命を大切にしよう
(6)互いに励まし合ってフェアプレーをしよう
(7)目の前の仕事に集中しよう
(8)いつも穏やかに落ち着いていよう
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(更新日: 2017年03月22日)
幸せ研究室